コーチングの効果的な行い方と考慮すべきポイント
「コーチングとは?その歴史と目的、効果を解説」では、コーチングに関する基本的な情報をまとめてご紹介しました。
実際に自社にコーチングを取り入れて社員の育成に取り組もうと考えた場合、具体的にどんなことに注意しながら何を行えば良いのでしょうか?
本コラムでは、コーチングを行うメリット・デメリット、コーチングトレーナーに求められるスキルなど、実践に活用できるポイントをまとめてご紹介いたします。
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コーチングとは?その歴史と目的、効果を解説
コーチングとは
改めて、コーチングとは、「答えはその人(コーチングを受ける人)自身の中にある」という原則に基づき、コーチングを行う側(コーチ)が、コーチングを受ける側(クライアント)に対してその人自身の考えや視点を引き出し、本人に気づかせるようなコミュニケーションを取り、自発的な成長を促し、目標や自己実現を達成する育成手法のことです。
コーチングは、もともとスポーツ分野で使われてきた言葉ですが、1990年代から2000年代にかけて日本に広まり、スポーツ分野以外にもビジネス分野や教育分野、医療分野(リハビリテーション)、育児分野など、幅広く活用されるようになりました。
コーチングと似た意味の言葉として、ティーチングやカウンセリングなどがあります。
これらとの違いについては後述します。
コーチングを行うメリットとデメリット
コーチングを実践する前に知っておきたいメリットとデメリットをご紹介します。
コーチングのメリット
まずは、メリットから見ていきましょう。
コーチングには、主に次のような3つのメリットがあります。
社員の主体性・自主性を高められる
コーチングは、上司や先輩などからトップダウンで教え込んだり指導やアドバイスを行ったりするものではなく、もともとその人の中にある能力や考え方を引き出す方法で育成を試みるものです。
そのため、コーチングが成功すれば、クライアントは自分の中にもともとあった答えや考え、希望などに気づかされることになります。この経験から「自己対話」の有用性を知れば、コーチングを受けなくても課題解決のために自問自答するようになります。
社員が困ったり悩んだりしたときに、上司など周囲にすぐ相談するのも大切なことですが、いつまでも人を頼ってばかりでは成長が望めません。
コーチングを行うことで主体性・自主性を高め、自力で問題解決ができるようになる点が一つ目のメリットです。
社員の個性を活かせる
上司や先輩などから指導やアドバイスを行う場合、教わる側が誰であっても内容にほとんど差は生まれません。ある意味、マニュアルのように画一的なものとなります。
一方、コーチングでは、クライアント自身の中に答えを求めるため、課題解決のための方法や、そこへ行きつくまでの過程などは100人いたら100通りあり、それぞれに個性が表れます。
社員それぞれが個性を出せるようになると社内に多様性が広がり、さまざまな視点が生まれ、問題へのアプローチが異なり議論が活発になるといったメリットがあり、多様性の高い組織は業績が良いという調査結果もあります。
社員の学習力がアップし自分で成長できるようになる
コーチングは、自身の中にある考えを引き出すものなので、コーチングを経験すると、「自分は何を考えているか」「やりたいことは何なのか?」「どのように成長したいのか?」といったことを考える時間が増えます。
その過程で、自身の知識などが不足していると感じた場合は、自ら学ぶようになり、この習慣が身に付くと、自分自身で成長できるようになるでしょう。
コーチングのデメリット
一方、ティーチングなどに比べた際にコーチングのデメリットといえるものは、次の3点です。
育成に時間がかかる
コーチングが成功する条件として、
- コーチとクライアントに信頼関係が構築されていること
- クライアントの課題が明確になっていること
- クライアントが課題解決に意欲的であり、行動できること
- コーチにコーチングスキルがあること
などが前提となります。
コーチやクライアントによっては、これらを整えるのにまず時間がかかります。
さらに、コーチング実施後にクライアントが行動を起こす必要があるため、ティーチングのような即効性は期待できません。
一度に多人数を育成するのには向いていない
コーチングは、コーチ1人に対してクライアント1人のマンツーマン、または、クライアントが数人のグループで行います。
このため、座学での研修のように一斉に大人数を教育することはできません。
コーチングを受ける側にまったく知識や経験などがない場合はうまくいかない
コーチングは、「答えはその人(コーチングを受ける人)自身の中にある」という原則に基づいて行われるため、クライアント側に課題意識や課題解決意欲、ある程度の知識・経験がないとどうしようもありません。
こうしたコーチングのデメリットは、ティーチングなどと組み合わせ、補完することで緩和しましょう。
コーチングの具体的な方法
ここからは、実際にコーチングを行う際にどのように進めていけば良いのかを、初心者コーチ向けにご紹介します。
1.現状の確認
まずは、クライアントの現状を確認します。この時点ではまだ課題までは把握する必要はありません。
クライアントにとっては、現状を確認されることで頭の中が整理され、話を聞いてもらえているという安心感を得られます。
現状確認の質問例
Q1.現状はどのような状況ですか?
Q2.その状況をどのように捉えていますか?
Q3.現状に対してどのように感じていますか? など
2.ゴールの確認
次に、目指すべきゴールを明確にします。
クライアントに、目標や望んでいる姿・状態をできる限り詳しく思い描いてもらいましょう。
明確なゴールを描くことで現状と対比させ、課題を浮かび上がらせることにつなげます。
ゴール確認の質問例
Q1.実現したいことは何ですか?
Q2.欲しい成果は何ですか?
Q3.最高の結果とはどのようなものですか?
3.課題の確認
クライアントが抱えている課題や悩み、問題を明らかにしていきます。
課題の確認の質問例
Q1.成果を妨げているものは何ですか?
Q2.パフォーマンスを下げるものは何ですか?
Q3.マイナスを生み出すものは何ですか?
4.課題解決のための具体的な行動の確認
前項で明らかになった課題を解決するためには、具体的にどのような行動が必要なのかを明らかにしていきます。
その際、参考になるような同僚・先輩などを挙げ、具体的にイメージさせる方法もあります。
課題解決のための具体的な行動確認の質問例
Q1.課題をクリアするためには、どんな行動が必要だと思いますか?
Q2.どんな環境にいれば成果が出せますか?
Q3.結果を出している人からどんなアドバイスをされると思いますか?
5.課題解決のために必要なリソースの確認
課題解決のために必要なリソース(スキル、知識、経験、費用、協力者など)を明らかにしていきます。
課題解決のために必要なリソース確認の質問例
Q1.課題解決のためにすでに持っているリソースは何ですか?
Q2.課題解決のために足りないリソースは何ですか?
Q3.必要なリソースは、いつ、どこで、どのようにすれば手に入りますか?
6.ゴールへ向けたロードマップを作成する
最後に、ゴールへ向けた行動の順番や時期を明らかにし、ロードマップを作成します。
ロードマップ作成のための質問例
Q1.どのような道筋でゴールへ向かいますか?
Q2.ゴールの期限はいつですか?
Q3.中間ゴールとして何を設定し、いつまでに達成しますか?
コーチングトレーナー(コーチ)に求められるスキル
「コーチングのデメリット」でもお伝えしたように、コーチングを成功させる前提条件として、コーチにコーチングのスキルがあることが挙げられます。
コーチングのスキルには100以上もの種類があるともいわれています。ここでは、特に重要な3つのスキルをご紹介します。
1.傾聴するスキル
傾聴とは、コーチングのほかカウンセリングなどでも活用されているコミュニケーション手法で、相手の話を聞いて受容・共感し、話の内容だけでなく表情やしぐさなどのノンバーバルな表現からも感情を読み取る方法です。
コーチが傾聴することで、クライアントは、自分自身に関する理解を深められ、積極的・建設的に話せるようになります。
クライアントとの信頼関係を構築するためにも重要なスキルです。
2.質問するスキル
クライアントに適切な質問を投げかけることで、クライアントはそれまで気づかなかった自分自身の考えや希望などに気づくことができ、自ら行動を変えられるようになります。
できるだけ多く深い気づきを与えられる質問を投げかけられるスキルを磨くことが重要です。
また、クライアントが「責められている」と感じるような質問は避けることも大切です。
たとえば、「どうしてできなかった(できない)のか?」ではなく「何か妨げになったのか?」のように、問題を外在化することで、クライアントはマイナスの感情を持つことなく問題に気づきやすくなります。
3.承認するスキル
クライアントは、コーチに承認してもらうことで承認欲求が満たされ、やる気や自発性が向上します。
コーチングにおける承認とは、存在を認めて受け入れ、褒めるなど言葉や行動でわかりやすく示すことを指し、単に褒めそやすこととは違います。
承認を伝える際は、事実のみを対象とすることに注意しましょう。
コーチングとティーチング、カウンセリングの違い
コーチングと似たような意味の言葉に、ティーチングやカウンセリングなどがあります。
それぞれとの違いをご紹介いたします。
ティーチングとの違い
ティーチング(teaching)とは、経験や知識の豊富な人が先生となり、生徒に知識・技術などを伝授することです。
短時間で情報やスキルを伝授でき、大勢を一度に育成できる点がコーチングにはないメリットです。
一方、ティーチングは一方向性のコミュニケーションに偏りやすく、先生側の知識やスキル以上の内容を教育できなかったり、生徒の主体性や自律性を育てられないというデメリットがあります。
カウンセリングとの違い
カウンセリング(counseling)とは、悩み・問題を抱えるクライアントに対し、カウンセラーが専門的な知識や技術を用いて相談・援助を行うことです。
コーチングが目標や夢、願望の達成のために行われるのに対し、カウンセリングはクライアントの悩みや不安を取り除いたり、問題を解決したりするために行われます。
まとめ
コーチングを実践するために必要な情報をかいつまんでご紹介いたしました。
コーチのスキルを身に付ければ、職場だけでなく、家庭や自分自身へのセルフコーチングなどにも応用が可能です。
社員の研修・教育に行き詰まりを感じているご担当者様は、一度、導入を検討してみても良いかもしれません。
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