営業支援システム(SFA)とは 機能からメリット・デメリットまで徹底解剖
1990年代後半から日本に広がり始めた営業支援システム(SFA)は、それまでベテラン営業マンの勘や経験に基づいた判断が主流となっていた営業現場に科学的根拠であるデータに基づく営業判断を持ち込みました。
それから30年近くが経った現在、日本における企業のSFA導入率は未だ30%程度だといわれています。
ここでは、改めてSFAの機能やメリット・デメリットを確認し、その有効性について迫ってみましょう。
営業支援システム(SFA)とは
営業支援システム(SFA)とは、Sales Force Automaitionのことで、営業活動を可視化し、商談やパイプラインを管理し、受注予測を立てることができるツールです。
営業活動を通して得た顧客データや営業アプローチの結果などを逐一、入力していくことで、営業活動に必要なデータベースができ、経験と勘で判断していたところからデータを元にした根拠ある判断へと遷移できるようになります。
また、個々の営業担当者の活動履歴を残すことができ、行動管理の側面も持ちます。
営業支援システム(SFA)とCRMとの違い
営業支援システム(SFA)と混同しやすいツールとしてCRM(顧客管理システム)がありますが、SFAがおもに商談から受注までのフェーズを担うのに対し、CRMはおもに受注後からリピート化のフェーズを担うツールです。
ただ、SFAもCRMも上記のような領域を中心にその前後までカバーする機能を備えた製品が多数登場しており、境界があいまいになってきています。
大きな役割として、SFAは営業活動の効率化を、CRMは顧客との関係維持を持っていると捉えることで両者の違いを認識できるでしょう。
営業支援システム(SFA)の機能
営業支援システム(SFA)には、営業活動を効率化するために必要なさまざまな機能が搭載されています。主な機能は以下の7点です。
【機能1】顧客管理機能
SFAの要でもある案件管理のためにもまずはベースとなる顧客情報を管理することが重要になってきます。
展示会などで集めた名刺情報のほか、リスト会社などから購入したターゲット企業のデータをインポートして活用します。
顧客の企業名や住所、電話番号、担当者の氏名、メールアドレス、役職といったプロフィール情報のほか、過去の商談履歴も保存しておきます。
【機能2】案件管理機能
顧客情報をベースに、現在、進行している営業案件の進捗状況を管理する機能です。
自社の営業担当者名と、いつ、どの商材においてどのようなやり取りが行われたかを記録しておき、受注確度などについても記録します。 受注の質・数を高める戦略を練るための元となる情報になるので、営業担当者一人ひとりの入力の徹底が求められます。
【機能3】商談管理機能
案件管理のうち、各商談の詳細を管理するための機能です。
商談の詳細を残しておくことで、一度、失注した案件や休眠顧客を一定期間後に掘り起こす際に、別の営業担当者に代わったとしても引き継ぎの手間なくスムーズに次の商談を行えるようになります。
SFAの特徴は、「顧客情報」「案件情報」「商談情報」の三つのレイヤーで顧客を管理する三層管理だといわれています。
【機能4】プロセス管理・スケジュール管理機能
SFAには、案件・商談情報を営業担当者ベースで捉え、各人の行動の予定と実績を可視化して管理し、営業担当者の評価につなげる機能も備わっています。
営業担当者のコール数、アポイント数、訪問数、提案商材数、受注数といったプロセス(行動)が可視化されることで、個々のスキルや業績が一目でわかり、アドバイスや人事評価につなげることができます。
また、スケジュールの可視化により、管理職が部下の動きを把握でき、営業同行へのスケジュール調整もしやすくなります。
営業担当者側にとっては、自己の営業活動の見直しにつなげたり、今なすべきこと、次にすべきことが明確になり、営業活動を効率的に進めやすくなります。
【機能5】売上予測・予実管理機能
過去の商談結果などのデータから、売上を予測する機能です。営業部門全体での売上だけでなく、チームごと、個人ごと、製品別、月別など、さまざまな切り口での売上予測を行えます。
また、予算に対する現状の進捗を比較し、進捗が遅れている場合は該当案件の詳細を開いてチェックすることも可能です。
【機能6】週報・日報作成・管理機能
多くのSFAには、週報・日報を作成・管理する機能も搭載されています。
あらかじめ設定された項目に入力するだけで週報・日報が作成でき、部内への共有も行えます。
【機能7】集計・分析レポート機能
SFAの役割は、情報の蓄積・管理にとどまりません。入力されたデータを集計・分析することで業務改善や利益向上につなげることができます。
分析機能がついていない場合は、集計結果から成約につながりやすいパターンの発見や失注案件の原因分析などを行いましょう。SFAについている分析機能を使うとしても、最終的な判断は人力で行うことになります。
レポート出力機能を活用すれば、必要な項目のデータを抽出してレポート化でき、会議などでの他部門への情報共有も楽に行えます。
営業支援システム(SFA)のメリット/デメリット
上記のようなさまざまな機能を持つ営業支援システム(SFA)は、活用次第で営業効率や利益を大きく向上できる可能性を秘めたツールです。
ここでは、SFAの導入メリットとデメリットを確認していきましょう。
営業支援システム(SFA)のメリット
営業支援システム(SFA)のもっとも大きなメリットは、営業に関するさまざまなデータが一元管理・可視化されることから、営業組織全体の動きをスピーディに把握できるようになる点です。その結果、精度の高い売上予測が可能になり予実がブレにくくなります。
SFA導入のメリットは管理職だけにもたらされるものではありません。現場のプレイヤーにとっても、逐一、管理職に案件の進捗を報告しなくても最適なタイミングでアドバイスや指示がもらえるようになったり、自身が関わりのなかった案件の情報を取得できるため、成績の良い営業担当者の案件情報や商談情報を参考に自分の商談に活かせるようになるといったメリットがあります。
営業支援システム(SFA)のデメリット
営業支援システム(SFA)のデメリットは、大きく二つあります。
一つは、SFA利用に当たり初期費用・ランニングコストという金銭コストが発生する点です。料金体系により、利用期間や利用人数との兼ね合いなどでコストメリットが変わってきます。自社にとってコストパフォーマンスの良い料金体系の製品を検討する必要があるでしょう。
もう一つは、活用するなかで日々、営業担当者が情報を入力しなくてはならず、工数がかかる点です。SFA導入前から営業成績の良かったメンバーからは特に、入力業務を敬遠される可能性が高いです。入力することで営業担当者が得られるメリットに共感してもらい、入力を徹底する必要が出てきます。
営業支援システム(SFA)10選
営業支援システム(SFA)が日本に入ってきてから約30年。今では日本で使えるSFAは海外製・国産を合わせ数十種類にもおよびます。
ここでは、そのなかから代表的な10種類をご紹介します。
1. Sales Cloud(株式会社セールスフォース・ドットコム)
Sales Cloudは、米セールスフォース・ドットコム社が開発したSFAとCRMが一体型になった製品で、世界でNo.1シェアを誇り、BtoB・BtoC、直販・通販を問わず幅広い企業に導入されています。
機能が豊富でカスタマイズも可能なSales CloudにはAI「Einstein(アインシュタイン)」が搭載されており、蓄積されたデータからアプローチするのに最適な顧客情報や成約率、売上金額といったさまざまな予測が可能です。
製品名にもある通り、クラウドサービスとして提供され、パソコン以外にもタブレットやスマートフォンからアクセス可能なマルチデバイス対応です。
2. Microsoft Dynamics 365(日本マイクロソフト株式会社)
Microsoft Dynamics 365もCRMとの一体型SFAで、マイクロソフトが提供しているため、Office365やマイクロソフトのERPといった同社製品との連携が簡単に行え、Officeを使い慣れているユーザーにとって使いやすいシステムとなっています。
マーケティング機能、SFA/CRM機能、ERP機能といったさまざまな機能を必要に応じて組み合わせるモジュール型システムで、拡張性や開発の柔軟性を強みとしており、自社で開発可能なシステム部門を持つ大企業などに向いています。こちらも提供形態はクラウドサービスで、AIを搭載しています。
SFA/CRM機能である「Dynamics 365 for Sales」には、見込顧客のスコアリングや予測分析によるパイプラインのヘルスチェックでアプローチの優先度を示唆してくれる機能が搭載されています。
3. eセールスマネージャーRemix Cloud(ソフトブレーン株式会社)
eセールスマネージャーRemix Cloudは国産のSFAで、5,000社を超える導入実績を持ち、導入顧客には大手企業が名を連ねています。日本の営業シーンに即した機能・UIが特徴です。
スマートフォンにも対応しており、スマホから名刺を撮影するだけで名刺情報をテキスト化できる「名刺読み取り機能」付き。
導入支援サポートに力を入れており、定着支援の専門チームが課題に合わせてアシストしてくれ、定着率は95%を誇るといいます。 提供形態は、オンプレミス、クラウド、ASPなど複数から自社に合ったタイプを選べます。
4. Senses(株式会社マツリカ)
Sensesは、SFA・CRM機能に加え、蓄積された営業情報からAIアルゴリズムが成功・失敗事例を解析する機能を搭載しています。営業担当者は、過去の成功・失敗事例をもとにSensesが導き出した「いつ」「誰に」「何を」「どのように」行うかというアドバイスを受けることができます。
情報の取り込みが工夫されており、手入力のほか、Gsuite、office365と連携してメールから直接、案件、アクション、取引先、コンタクト情報を登録できるほか、企業名を入力するだけで住所や電話番号、従業員数などの企業概要やプレスリリース、財務情報などを自動で取得できます。
提供形態はクラウド(SaaS)で、スマートフォンにも対応しています。
5. Knowledge Suite(ナレッジスイート株式会社)
Knowledge Suiteは、SFA・CRM機能、グループウェアなどの機能を備えた国産のオールインワンサービスで、2010年度の「グッドデザイン賞」や東京都ベンチャー技術大賞「優秀賞」など多数の受賞歴を持っています。
SFA機能に関しては、顧客情報に日報(営業報告)を入力するだけで商談・案件情報を一元管理し、営業プロセスや予実の可視化を実現してくれます。 提供形態はクラウド(SaaS)で、スマートフォンにも対応しています。
6. JUST.SFA(株式会社ジャストシステム)
JUST.SFAは、ソフトウェア開発で長年の実績を持つジャストシステムが提供する国産SFAです。
専門知識不要でカスタマイズが可能で、たとえばユーザーごとに表示されるパネルのレイアウトをマウスだけで変更することもできるという簡便性の高さで、使い勝手の良さへのこだわりが感じられます。
提供形態はクラウドで、スマートフォンにも対応しており、名刺取り込み機能も付いています。
7. intra-mart DPS for Sales(株式会社NTTデータ イントラマート)
intra-mart DPS for Salesは、システム共通基盤としてのプラットフォームに他システムを連携させたり、基幹システムやグループウェアといったアプリケーションレイヤーを組み合わせて個々の企業にマッチしたソリューションを提供する「intra-mart」のSFA機能です。
「複雑な営業プロセスをシンプルに」をコンセプトに作られており、営業効率と受注効率の最大化をミッションに、営業情報の可視化と定量化の促進、適切なパイプライン管理と精度の高いフォーキャス管理を叶えてくれる製品です。
提供形態は、オンプレミス、SaaSに加え、両社の良いところ取りをした「On Accel Mart」の三形態です。
8. cyzen(レッドフォックス株式会社)
cyzenは、勤怠・業務管理ツールとして提供開始された製品への機能強化により生まれた国産SFAで、現場目線で役に立つ機能のみに絞って開発されています。
導入時の手間を大幅に圧縮できることが強みで、最短では1日で初期設定を終了でき(初期設定のまま利用することも可能)、導入から1週間で運用を軌道に乗せることができるといいます。
「スマホを見れば営業に必要な情報がすべて手に入る」をうたうほどスマートフォンへの対応に力を入れており、アプリの動作速度やUIが最適化されています。
9. Nice営業物語(株式会社システムズナカシマ)
Nice営業物語は、プロペラ設計用自社製CADシステムの開発から事業をスタートしたシステムズナカシマが提供する国産SFAで、「リアルタイムな商談進捗管理による受注率アップ」と「強い営業マンの育成」の実現を掲げています。
スマートフォンやタブレットにも対応しており「スケジュール管理や営業報告が作成できる営業サポートアプリ」を掲げる無料のスマホアプリ「Nice営業物語Smart3」との連携も可能です。
10. kintone(サイボウズ株式会社)
kintoneは、案件管理アプリや日報アプリなど営業の業務に必要なアプリを簡単に作成できるサービスで、SFA機能だけでなく、クレーム管理などCRM向けのアプリも作成可能です。
kintone上で作成された複数アプリを横断して、プロジェクト別にまとめて情報閲覧することができます。
情報共有やコミュニケーション機能にも力を入れており、働き方改革を推進するためにも重宝します。
提供形態はクラウド(SaaS)で、スマートフォンにも対応しています。
まとめ
営業支援システム(SFA)に関する主要な情報をまとめてご紹介しました。
顧客情報、案件の進捗状況といったデータが属人化して管理されている組織では、SFAによる営業に関する情報の一元管理で効率化が大きく進むのではないでしょうか。
さまざまなベンダーからSFAが提供されていますので、自社の営業スタイルに合った製品を選定しましょう。
ただ、導入した後、案件情報のデータベースとして使われるぐらいで、あまり活用が進んでいないところも少なくないようです。
導入後の活用が軌道に乗るまで支援してくれるサポート体制の整ったSFAを選ぶというのも一つの手でしょう。