ランチェスター戦略とは?〜メリット・デメリットからビジネスへの活用方法・成功事例までご紹介
多くの企業で実践されている経営戦略に「ランチェスター戦略」があります。
ランチェスター戦略は、戦力の高い「強者」と戦力の弱い「弱者」に分けて、それぞれに有利な戦略を考えた理論です。
もともとは軍事戦略において使われていた理論でしたが、現在ではマーケティングに応用されています。
「市場競争で勝ちたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. ランチェスター戦略とは
ランチェスター戦略とは、中小企業が大企業に勝つために提唱された戦略です。
中小企業は、予算や人的資源の規模が違う大企業と同じ施策を講じることはできません。そのため、大企業と同じ戦い方で勝とうとしても、難しくなるのです。
ランチェスター戦略では、自社の得意な分野にフォーカスし、得意なフィールド上で戦う戦略を講じます。したがって、弱者である中小企業でも、大企業とも争えるようになるのです。
2. ランチェスター戦略の2つの法則
ランチェスター戦略には、「第一法則」と「第二法則」があります。
第一法則
ランチェスター戦略の「第一法則」は、一対一での戦いに適用される法則です。
この法則は、同じ戦力同士で争った場合を想定しています。同じ戦力同士のものが争ったときに勝敗を分けるのは、戦闘する人員の数です。弱者の立場に立って第一の法則でマーケティング戦略を考えてみると、数で劣勢であるのであれば、人員が少なくても戦えるフィールドを選択することと、質で勝負することになります。
したがって、特定の分野に特化して戦略を練ることや、商品やサービスの質を向上させるといった戦略が考えられるのです。
第二法則
ランチェスター戦略の「第二法則」は広い範囲で戦う広域戦を想定したものです。1人で複数の相手を攻撃する際の戦力が重視されます。
第一法則では、少ない人員でも質であっても狭い場所で戦えば勝利できる戦略でした。しかし、第二法則に則って考えた場合、戦うフィールドが広くなります。そのため、人員が豊富で、質のよい武器や資金を持っている企業が有利になるのです。
3. ランチェスター戦略から派生したマーケットシェア理論
ランチェスター戦略から派生した理論に「マーケットシェア理論」があります。
弱者と強者を見分ける際に、マーケットシェア理論を用います。大企業であれば、必ずしも強者と呼べるわけではなく、中小企業はすべて弱者といえるわけではありません。市場のマーケットシェア率が1位の企業は強者であり、そうでない企業は弱者と定義づけることができます。特定の市場でマーケットシェアを獲得できていれば、中小企業であっても強者と呼べます。そして、大企業であってもシェア率が低ければ、弱者となるのです。
ランチェスター理論を実践するには、まずマーケット理論に基づいて自社が強者なのか弱者なのかを見分けるところから始めます。
4. ランチェスター戦略のメリット・デメリット
ここからは、ランチェスター戦略のメリットとデメリットを解説します。
ランチェスター戦略のメリット
ランチェスター戦略のメリットは、理論に基づいて戦略を立てれば、弱者が強者にも勝てる可能性が高まるということです。
強みがある分野や特定の市場での1位獲得を目指すため、自分の得意な面で勝負できます。
また、ランチェスター戦略では、強者である企業が弱者に対して取るべき戦略も示されています。
そのため、強者の視点に立って考えることも可能なのです。
ランチェスター戦略のデメリット
ランチェスター戦略のデメリットは、戦略が万能ではないという点です。
有用な戦略ではありますが、正しいアプローチを行ったとしても、必ずしもシェアを獲得できるというわけではありません。効果的にランチェスター戦略を実践するためには、経営に関する知識や、正しく実践するためのノウハウが必要となります。まずは基本的な知識やスキルを身につけることが大切です。
また、弱者と強者を読み間違えてしまうと、強みを発揮できないばかりか、相手が得意なフィールドで戦うことになる恐れもあります。
5. ランチェスター戦略を成功に導くポイント
ランチェスター戦略を成功に導くポイントは、戦う敵である企業を見定めることです。
自社よりも強い敵と戦うのではなく、まずは自社よりもシェアを獲得できていない競合他社から攻めます。なぜなら、自社よりシェア率の低い競合他社と争う方が、上位の企業と争うよりも勝ちやすいためです。シェア率の高いトップ企業と闇雲に戦っては、深い傷を負うことになるかもしれません。
したがって、まずは自社が勝てるフィールド(領域)を見つけて、勝てる相手と戦うことが大切です。
6. ランチェスター戦略を活用した成功事例
ランチェスター戦略を活用した株式会社エイチ・アイ・エスの成功事例が知られています。
旅行事業を営む株式会社エイチ・アイ・エスは、かつて弱者であった時代に「弱者の法則」を取り入れた戦略を実施しました。その戦略は、大手旅行会社が取り扱うような人気観光地である「ハワイ」や「グアム」を避け、特定の地域のツアーに力を入れるというものです。そして、少しずつ戦うフィールドを拡大し、頭角を表していきました。
ランチェスター戦略で成功した企業の事例は多く、理論に基づいた手堅い戦法であるといえるでしょう。
7. ランチェスター戦略の実践方法
ランチェスター戦略を実践する方法は、次の通りです。
1.マーケティング環境分析(内部環境・外部環境)
2.自社が有利である市場を洗い出す
3.自社の強みを活かしたブランディングを行なう
まず、自社の内部環境・外部環境の分析を行ない、自社の位置付けや現状を客観的に見て把握します。ここで、自社の強みや弱みも明らかにしておきましょう。そして、自社が有利な市場を洗い出し、主戦場を決定します。
次に、自社が輝くための効果的なブランディングを行なうという手順です。効果的なブランディングを行なうためには、自社の強みや魅力について把握することが何よりも重要です。
以上の点を意識しながら、戦略を練ってみましょう。
8. まとめ
今回は、ランチェスター戦略について解説しました。
売上シェアをもっと伸ばしたい企業や、弱者の戦い方を身につけたい企業の助けとなるのが、ランチェスター理論です。多くの企業が実践している理論のため、事例をもとに手堅くシェア率を伸ばす戦略を取ることができます。
ランチェスター理論で成功するには、自社の市場規模や得意とする分野、競合他社についての把握が成否を分けます。正しく現状分析を行ない、弱者と強者の視点を間違わずに実施していきましょう。