バイヤーイネーブルメントとは?~注目される背景から実践のプロセスまで解説~
企業の営業力を高めるのに役立つのが「バイヤーイネーブルメント」です。
バイヤーイネーブルメントを取り入れれば、営業がプッシュせずとも、自然と顧客の購買行動を促すことができます。
本コラムでは、バイヤーイネーブルメントの概念や、実践するためのプロセスについてご紹介します。
1. バイヤーイネーブルメントとは
バイヤーイネーブルメント(Buyer Enablement)は、アメリカの調査会社Gartner社によって初めて世に出た言葉として知られています。その意味は、「顧客の購買行動において、良い意思決定ができるように支援すること」です。
ITの普及に伴い、一対一で行う営業スタイルではなく、顧客自らがインターネットで商品やサービスについて検索して購入を検討するケースが増えました。つまり、営業担当者から直接話を聞いて購買決定にいたるのではなく、自分で商品情報やクチコミなどを比較し、見当する時代に変化しているということです。
バイヤーイネーブルメントは、こうした購買行動の変化から生まれた概念といえます。直接売り込むのではなく、顧客の購買行動を支援するという考え方です。
2. バイヤーイネーブルメントとセールスイネーブルメントの違い
バイヤーイネーブルメントに似た概念に、セールスイネーブルメントがあります。
バイヤーイネーブルメントが、顧客の良い意思決定を支援するのに対し、セールスイネーブルメントは、「営業活動の数値化により、全体の施策を改善する取り組み」のことを指します。
よく似た概念ではあるものの、営業施策全体を見直して有効性を高めるセールスイネーブルメントと、顧客の購買行動そのものの有効性を高めるというバイヤーイネーブルメントでは、それぞれ重要視する点が異なるのです。
3. バイヤーイネーブルメントが注目される背景
バイヤーイネーブルメントが注目される背景には、「インターネットの普及」や「ミレニアル世代の影響」があります。
インターネットの普及
バイヤーイネーブルメントが注目される背景には、インターネットの普及が関係しています。
従来の営業アプローチとしては、営業担当から商品の売り込みをするプッシュ型というかたちが主に取られていました。
しかし、近年ではインターネットの普及にともなって、Web上で情報収集をする機会が増えています。
不明なことがあればインターネット検索を行なうのが一般的になり、商品に関する情報を収集してから購入するということは、よく見られる事象となりました。
以上のように、インターネットの普及によって顧客の購買行動が変化したことから、バイヤーイネーブルメントが注目されているのです。
ミレニアル世代の影響
ミレニアル世代の影響も、バイヤーイネーブルメントが注目されている理由の一つです。ミレニアル世代とは1995年~2000年頃に生まれた世代のことです。
幼少期からインターネットが身近にあったミレニアル世代は、デジタルネイティブとも呼ばれており、Web検索やSNSを使って自ら情報収集を行ないます。購入を検討したいときには、口コミを調べ、類似商品と比較ののちに購入に至るのです。
こういった行動は、企業の担当者から説明を受けるよりも、口コミやレビューなどの生の声を参考にするほうが、信憑性が高いといった理由から考えられます。インターネットと関わりの深い世代であるミレニアル世代は、意思決定の際に積極的に情報収集を行なっています。ミレニアル世代の影響もバイヤーイネーブルメントと密接に関わっているといえるでしょう。
4. バイヤーイネーブルメントを実践するプロセス
ここからは、バイヤーイネーブルメントを実施するプロセスについて解説します。
顧客の購買行動の把握
顧客の購買行動は、いくつかの段階に分けられます。購買行動のモデルは複数存在しますが、その基本的な形を示しているのがAIDAの法則です。
Attention(注意)→interest(関心)→Desire(欲求)→Action(行動)といった順序で心理的な変化のプロセスを表しています。
上記のようなモデルに照らし合わせて、自社の商品やサービスに対する顧客の反応を分析し「今、顧客がどの段階にいるのか」や「どのプロセスでつまずきやすいのか」を明確にすることで改善を図ることができます。
バイヤーイネーブルメントを実施する際は、まず顧客の購買行動を把握するところから始めてみましょう。
Web上での購買行動をサポート
バイヤーイネーブルメントで必要なことは、Web上での購買行動をサポートすることです。
顧客の購買行動において、スムーズかつ良い選択を支援するためには、「必要な情報を適切に提示する」ことは外せません。そのためには、顧客がどのような課題を抱えているのかを把握し、その課題を解決するために必要な手助けをする必要があります。顧客の購買行動をサポートするために必要な事柄としては、「サービスのお試し機能」や「事業紹介」「他者との比較」などの、さまざまな形での情報呈示です。
これらを、顧客が必要としているタイミングで呈示することが鍵となります。
5. バイヤーイネーブルメントを促進するコンテンツ
バイヤーイネーブルメントを促進するために必要なコンテンツとして、Gaetner(ガートナー)社は7つの項目を取り上げています。
自社の提供するコンテンツが、以下の項目に合致しているかどうかを参照しながら取り組んでみてください。
1 分析機能:顧客にデータ分析機能を提供する
2 助言機能:それぞれの購買活動に対して顧客をコーチングする
3 診断機能:現状のパフォーマンスを評価、または顧客に必要なオプションを特定する
4 比較機能:顧客には入手困難な情報を使って他社と比較する
5 共有機能:顧客社内のステークホルダーと共有できる土台を提供する
6 実験機能:解決策が顧客の環境でどのように機能するかを模擬実験する
7 案内機能:顧客の入力内容に応じた具体的な購買タスクの選択肢を提供する
以上の指標を手掛かりに進めることで、取り組みや施策が正しいかどうかを判断するのに役立てられます。
6. まとめ
今回は、バイヤーイネーブルメントについて解説しました。
まだ日本では馴染みのない概念ですが、現代の購買プロセスに適応する上で、押さえておきたい考え方です。
営業活動の効果を高めるためには、顧客の視点に立って商品やサービスを提供する必要があります。しかし、時間に追われている中では、顧客に適したコンテンツ制作に時間が割けない場合もあるでしょう。営業成果を最大限高めながら、業務の効率化を図るために、SFA(営業支援ツール)を取り入れるのもおすすめです。
intra-martが開発した「DPS for Sales」では、営業活動に役立つ機能を搭載したSFAを提供しています。ぜひ導入を検討してみてください。