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営業組織の作り方 ~「THE MODEL」に学ぶSaaS企業の組織づくり~

営業組織の作り方 ~「THE MODEL」に学ぶSaaS企業の組織づくり~

SaaS系サービスを提供する企業にとって、現在、最も注目度の高い営業組織モデルは「THE MODEL」でしょう。

「THE MODEL」が提唱する組織論は、営業の効率化、顧客との接点という点において優れたフレームワークです。

本コラムでは、特徴や効果など、「THE MODEL」の概要をご紹介します。

 

「THE MODEL」とは

「THE MODEL」とは、2020年1月からジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社のパートナーおよびJCCコンサルティング株式会社の代表取締役社長を務めている福田 康隆氏の著書で、営業組織を分業化することでプロセスの最適化を実現する方法を解説したものです。
福田氏は、新卒で日本オラクルへ入社後、Oracle本社への出向を経てSalesforce.comに転職。日本法人のセールスフォース・ドットコムへ移って専務取締役兼シニアバイスプレジデントを務めた後、マルケト代表取締役社長へ転身。マルケトがアドビ システムズに買収されたことでアドビ システムズ専務執行役員 マルケト事業統括となり、その後、ジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社のパートナーおよびJCCコンサルティング株式会社の代表取締役社長へ就任という経歴を持っています。
日本オラクル・Oracle時代はエンジニアとして勤務していた福田氏が畑違いのセールスへ転向したのは、日本オラクルの元会長の勧めでSalesforce.comに転職したことがきっかけでした。ただ、それ以前にも米国人の上司から「日本人はあれほど生産管理を緻密に行うのに、なぜ、営業に関しては何もしないのか?」と聞かれることがあり、米国の書店に並ぶ営業に関して体系的にまとめられた解説本の数冊を読んで衝撃を受けたといいます。
「THE MODEL」は、福田氏がSalesforce.comで実践されていた営業組織の分業体制を日本に持ち帰り、セールスフォース・ドットコム、マルケトで実践してブラッシュアップしたものを、実体験を交えながら解説した本です。


 

「THE MODEL」の特徴

「THE MODEL」の特徴
 

「THE MODEL」の特徴は、なんといっても、それまで「見込客の発掘からアポ獲得、商談、顧客フォロー」までを一人の営業マンが一気通貫で行ってきた日本の営業スタイルを、顧客のステージに合わせて営業プロセスを分割して分業するスタイルへと変革する」ことを提案している点です。
具体的には、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「定着化支援」の4つに分け、それぞれのプロセスで、「母数」「成功率」「ゴール」を数値化することを提唱しています。前のプロセスにおける「ゴール」は、次のプロセスの「母数」になるということです。
「THE MODEL」で提案されている各プロセスの標準的な「母数」「成功率」「ゴール」は次のような指標です。


    • マーケティング(潜在顧客の獲得)
      母数:来訪者数
      成功率:獲得率
      ゴール:見込客数

    • インサイドセールス(見込客の育成・案件発掘)
      母数:見込客数
      成功率:案件化率
      ゴール:案件数

    • 外勤営業(商談管理・受注)
      母数:案件数
      成功率:受注率
      ゴール:受注数

  • カスタマーサクセス(活用支援・契約継続)
    母数:受注数
    成功率:契約更新率
    ゴール:継続契約数

ただ、上記はあくまでも目安で、これを元に各社の組織体系や人的リソースに合わせて調整することが推奨されています。


 

「THE MODEL」が目指す姿

「THE MODEL」が自社にマッチする形で導入され、正しく実践されることで、営業プロセスが最適化され、営業成績は向上するでしょう。
ただ、「売上が上がった」ところで満足してしまっては、「THE MODEL」の真価は発揮されません。
「THE MODEL」では、「カスタマーサクセス」が何よりも重要と位置づけています。カスタマーサクセスとは、提供する製品・サービスを通じて顧客の成果を実現するための活動のことです。カスタマーサポートのような受け身での対応も含みますが、顧客にとっての成功を助けるために積極的に働きかける点に特徴があります。
カスタマーサクセスは、サブスクリプション型ビジネスモデルの台頭とともに重視され始めました。一度の契約で取引が終了する買い切り型のビジネスモデルと異なり、サブスクリプション型ビジネスモデルでは、解約を阻止しながら継続利用してもらうなかでプランアップなどを狙い、LTV(顧客生涯価値)を最大化することが大きなテーマとなるからです。
営業組織のなかに、マーケティングやインサイドセールス、フィールドセールスと同じ比重でカスタマーサクセスを持ち運営することが、「THE MODEL」が目指す理想の姿だといえます。


 

「THE MODEL」の導入で気をつけるべきこと

「THE MODEL」の導入で気をつけるべきこと
 

「THE MODEL」では、基本的に営業組織をさらに明確な目的ごとにチーム分けして分業することを推奨しています。しかし、分業による弊害には注意しなければなりません。


視野が狭くなる


分業により、各営業チームは決まったタスクに集中できるようになるため、効率化が進みます。
ただ、その反面、限られた自分のタスクや個人・チームのKPIといった狭い視野で業務を行うことになり、営業プロセス全体を見渡す意識が薄れてしまう懸念があります。
一人でリード獲得から受注後の顧客フォローまでを行っていた時は、全体を眺めなければ仕事ができなかったため、自然と営業プロセス全体を考えて行動していた営業マンも、分業化により所属チームのKPIの達成だけに集中してしまい、営業部門全体の利益には相反する行動を取ってしまう可能性が生じます。


顧客情報の共有


チーム制で分業することで、これまでは一気通貫で行ってきた顧客対応が各チームで分断されることになります。このため、それまで以上に対応内容や顧客の反応、ヒアリング内容といった情報を営業部門内で共有する必要が出てきます。
多くの企業では、MAやSFA、CRMといったツールを活用して情報共有を行っていると思いますが、営業メンバーによって情報の粒度や確度のジャッジの基準が異なっては情報共有の精度が低いものになってしまいます。
ツールやシステムへのデータ入力時のルールを整備して共有・浸透させる必要があるでしょう。


 

「THE MODEL」導入で期待できる効果

「THE MODEL」導入で期待できる効果
 

「THE MODEL」が提唱する営業組織を実践した場合に得られる効果としては、次の三つが挙げられます。


営業活動の効率化が進む


多くの作業は、単純化された内容を繰り返すことでスピードが上がってミスが低減し、効率化されていきます。
営業マン一人がすべての営業プロセスを担っていた際は業務の内容も量も多かったため、効率的に働くことが難しく、どこかで手厚く対応すればどこかで手を抜くというように強弱をつけて取り組まなければ、とても終えられるものではありませんでした。
分業化によって、各チームは割り当てられたミッションに集中できるようになるため、生産性の向上も期待できます。


営業活動のPDCAが回しやすくなり、改善が進む


先ほど、前のプロセスで設定された「ゴール」が次のプロセスの「母数」になることをお伝えしましたが、分業していてもこのようにKPIがつながっていることで、全体として営業活動の改善を進めやすい組織をつくることができます。


営業力の高い組織を作ることができる


そもそも、分業化した目的は、営業組織全体での営業プロセスを最適化するためでした。ご紹介したような分業を自社に合った形で実現できれば、自ずと営業プロセスが最適化され、組織全体として営業成績の向上が期待できます。
逆に、「THE MODEL」を実践しているのに組織全体としての営業力が上がっていないということになれば、どこかに問題があるはずなので、見直す必要があるでしょう。


 

まとめ

これまでの営業マンといえば、リードやアポの獲得から受注、場合によっては顧客のフォローまでを一人で担当するケースが多く、営業組織は属人的なものでした。
しかし、「THE MODEL」の登場で「属人的な営業は古い」という認識が広がり、営業部門のなかでもチーム分けがなされ、明確な役割を持った分業を行うスタイルがベストなものとして捉えられてきています。
そして、「THE MODEL」の終着点は、カスタマーサクセスです。カスタマーサクセスについてもぜひ、「THE MODEL」の営業組織論を新しい組織づくりに役立ててみてください。

 

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