セールステックの課題とこれから必要なスキル
「〇〇テック」に代表されるように、業界・業種を問わずデジタル化の波が押し寄せており、業務単位でもテクノロジー化が進んでいます。
営業部門においては「データドリブンセールス」といった言葉も聞かれ、実際に営業現場でもデジタルツールの活用が見られるようになりました。
セールステックが浸透し始めた現在は、足と根性で稼ぐ時代からデータと理論で数字を作る時代への過渡期ともいえます。本コラムでは、そんなセールステック時代に必要なスキルと、セールテックが抱える課題についてご紹介いたします。
セールステックの国内での課題
まずはセールステックが抱える課題を見ていきましょう。ここでは特に、国内のセールステックに焦点を当てます。
現場のITリテラシーが低い
多くの場合、セールステックは営業部門のマネージャーや経営層などからのトップダウンで推進されます。しかし、現場の営業メンバーのITリテラシーが低いと、導入はスムーズにいきません。特に、これまで勘と経験で足を使って数字を作ってきたベテランの営業メンバーにとって、デジタル化を受け入れることは従来の営業スタイルを否定されたと同様に感じるでしょう。
それでも、もともとデジタル機器に興味があれば親和性は高いのですが、そうしたメンバーは一部であるという組織が多いものです。
現場のITリテラシーが低いと、導入後の定着がうまくいきません。すると、活用のフェーズへ移れず、結局は効果が出なかったということになってしまいます。
ツールに集積されていくデータをうまく活用できない
セールステックを推進して何らかのデジタルツールを導入すると、そこに営業活動に紐づくさまざまなデータが蓄積されていきます。
これらのデータは会社の資産であり、データクレンジングなどを行いながら適切に取り扱い、分析して売上向上のために役立てるべきですが、そこまで手が回っているという企業は多くないでしょう。
既存のツールにデータ活用のための機能が付いていなければ、新たにBIツールなどを導入する必要も出てきますし、ある程度、データ活用に関するスキルを持った人材が必要になるため、ハードルが低いとはいえません。
ただ、蓄積したデータを活用できなければもったいないことですし、セールステックの拡大にもつながっていきません。
セールステック導入が進められる理由
前章でお伝えしたような課題はありますが、以下のような背景から、セールステックを積極的に進めていく必要があるといえます。
ニーズの多様化や購買行動の変化
かねてよりBtoCを中心に消費者ニーズの多様化やWebを介した購買行動への変化が指摘されて久しいですが、その流れはBtoBにも及んでいます。すべての見込客に画一的に商談を行っても受注しにくく、営業マンにはコンサルティングの要素が求められるようになってきています。
その中でまず対策しておきたいのが、見込客の興味関心の方向性や度合いなどの把握です。このフェーズはどちらかというと営業ではなくマーケティングの領域に当たります。つまり、これからはどの企業にもマーケティングへの取り組みが求められているということでもあります。
MAなどを活用して顧客とのデジタル接点によって得られたデータを蓄積・分析し、営業活動に利用していくことは、これから当たり前になっていくでしょう。
少子高齢化による労働力不足
内閣府が発表した「少子化社会対策白書」によれば、日本の総人口は2055年には1億人を割ることが予想されています。
今後、少子高齢化が進めば労働人口も減少することになり、その対策として「働き方改革」が打ち出されました。
労働人口が減少すれば、当然ながら営業人材も減っていきます。営業先企業の従業員数も減少する可能性が高いでしょう。そうなれば、営業活動をもっと効率化していく必要があります。顧客のためには商談の負担もできるだけ軽減する必要があるでしょう。
その手段の一つとして、デジタルテクノロジーの活用が考えられ、セールステックが求められています。
セールステック導入で求められる営業のスキル
今後、セールステックが普及していくことが予想される中で、営業パーソンに求められるスキルとは何なのでしょうか?
コミュニケーション能力
営業活動にいくらデジタルテクノロジーが浸透しても、商談そのものは消えるわけではありません。そのため、引き続きコミュニケーション能力は必要です。
ヒアリング力や提案力を含めた商談力・営業力ともいうべき、見込客との会話から課題を把握し、最適な提案を論理的に展開することや、必要な数値や資料を提示するといったスキルが求められます。
基本的なIT知識
「セールステックの国内市場の課題」でも触れましたが、セールステックの推進の中で導入されるデジタルツールを活用して営業活動を進めていくに当たり、基本的なIT知識や操作は必要です。
デジタルネイティブ世代にとっては当たり前のことでも、年配者にはなかなか慣れないことがあるかもしれません。ただ、長寿化し、年金の支給年齢が引き上げられる中、高齢になっても現役で活躍できるよう、スキルアップを続けることが大切になってくるはずです。
また、年齢に関係なくデジタル機器が苦手という人も一定数います。
しかし、セールステックの必要性を考えると、最低限、基本的な知識を身につけ、新たなテクノロジーに対してもある程度、アンテナを張ってキャッチアップしていくことが求められます。
データを読み解く力
セールステックを進める中で、営業部門内にはさまざまなデータが蓄積されていきます。データは会社の資産ですが、ただ蓄積しているだけでは宝の持ち腐れで、活用して初めて活きてきます。
本格的なデータ活用には、データサイエンティストなど、データの専門スキルを持った人材が必要になりますが、最近ではセルフサービスBIなど、専門知識がなくてもデータ活用しやすいツールが揃ってきています。
とはいえ、ツールが行ってくれるのはデータの可視化や大まかな分析にとどまるため、最終的にデータを解釈して活用するのは営業部のメンバーになります。可視化されたデータを読み解くスキルは求められます。まずは、導入したデジタルツールのベンダーにノウハウを共有してもらい、データの読み方を教わるところからスタートすることで、無理なくスキルをつけていけるでしょう。
セールステックのサービス・ツール
最後にセールステックの具体的なサービスやツールをいくつかご紹介いたします。
代表的なもの、これから注目を集めそうなものを中心にお伝えしていきます。
Pipedrive(SFA/CRM)
画像引用:Pipedrive
「Pipedrive」は、セールスCRMをうたう製品で、世界179ヵ国で利用されています。
案件を進捗ごとに表示するなど、タスクを可視化でき、対応漏れなどを防いでくれます。
パイプライン管理がしやすいUIになっており、操作もドラッグアンドドロップで直観的に行えるため、ITツールに不慣れな方にも扱いやすいツールです。
条件にマッチした顧客に対して一斉メールを送る機能なども付いています。手頃な料金も魅力の一つです。
【h3】クラウド商談どこでもSHOWBY
画像引用:クラウド商談どこでも
「クラウド商談どこでもSHOWB」は、音声通話機能、画面共有機能、カメラ機能、チャット機能、ノート機能などが揃った商談ツールです。
商談中に活用したいカンペ機能や、商談後にお客様にアンケートに答えてもらう機能なども付いています。
特長的なのは標準装備されている「バーチャルエントランス機能」で、先方へバーチャルエントランスの案内をしておけば接続のための情報を伝えなくても約束の日時に商談ルームで商談を行え、見込客の心理的なハードルを下げてくれそうです。利用料金も月額1,980円からとお手頃です。
【h3】Handbook
画像引用:Handbook
「Handbook」はクラウドを活用したコンテンツ管理システムで、営業資料や商品カタログ、などをモバイル端末やパソコン向けに配信できます。
もともと、セールスイネーブルメントツールとして売り出されているもので、営業パーソンが現場でタブレット端末などを見込客に見せながら商談を行うことが想定されていますが、社内向けの会議資料やマニュアル、研修資料などを共有するのに活用することもでき、営業部門や社内のペーパーレス化を推進できます。
コンテンツを配信するだけでなく、閲覧状況といった分析も可能です。
また、教育などで活用できる小テストやクイズ機能が付いています。
【h3】uSonar
画像引用:uSonar
「uSonar」は、法人データベースサービスの草分けともいえるランドスケイプが提供しているデータ統合ツールです。自社の顧客や見込客のデータは、ツールを運用していく中で重複登録をしてしまったり、社名が変更になったり、合併したりということが起こるため、定期的なデータクレンジングが必要です。これを効率化してくれるのがデータ統合ツールです。
uSonarは、自社で保有するデータ以外に9.3億件もの企業情報を提供してくれ、自社データと統合することができます。また、名刺情報を取り込む名刺OCR機能も付いており、名刺管理ソフトとしても活用できます。
SFAやCRM、MAといった顧客情報を利用するツールを活用するに当たり、重宝するのではないでしょうか。
【h3】Looker
画像引用:Looker
「Looker」は、世界的に利用されているデータ分析プラットフォーム(BIツール)で、データを、整合性を保ちながら中長期に運用保守していくためのツールです。開発した米Looker Data Sciences社は2020年2月にGoogle社のクラウド部門に買収されました。
直感的に加工できるダッシュボードや、Googleスプレッドシートとの連携によるデータ追加作業などはデータの専門知識がない人でも扱いやすいですが、利用に際して独自の言語「LookML」を学習する必要があり、本格的なデータ活用を行いたい企業向きの製品です。
【h3】Google Data Portal
画像引用:Google Data Portal
「Google Data Portal」は、無料から利用できるセルフサービスBIです。セルフサービスBIとは、データの専門知識やスキルを持たない人が扱うことを前提としたBIツールで、視覚的・直感的に操作できるものが多く、誰でも必要な時に必要な情報を引き出せるようになっています。
Googleの製品であるため、スプレッドシートやGoogle AnalyticsなどほかのGoogleのプラットフォーム上に蓄積されたデータの連携がスピーディに行え、ダッシュボードやレポートを簡単に作成できます。
まとめ
セールスの分野で今後、拡大していくであろうセールステックについて、現状の国内での課題やこれからの営業パーソンに求められるスキルなどについてご紹介しました。
セールステック導入には金銭コストや従業員の学習コストなどがかかり、必ずしもスムーズにいかないことも考えられますが、DX推進など、ますますデジタル化が進む今後のビジネス環境において、取り組みは必須のものになるでしょう。
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