営業プロセスの基本的の流れとは?活用できるフレームワークとメリットについて解説
営業プロセスとは、営業活動を効率的に進めるための一連の手順を指します。
営業プロセスを適切に可視化し、管理することは、企業にとって重要な課題です。
特に、営業担当者が営業活動の全体像を把握し、各段階で適切なアクションを取るためには、フレームワークの活用が不可欠です。
営業プロセスの効率化を図るための様々なツールや手法が注目を集めており、営業の成果を最大化するための取り組みが進んでいます。
そこでこの記事では、営業プロセスに役立つフレームワークをご紹介いたします。
営業プロセスとは
営業プロセスとは、見込み客の発掘から最終的な成約に至るまでの一連の手順や段階を指します。
企業が営業活動を効率的に進め、成功率を高めるためには、営業プロセスを明確にし、それを体系的に実行することが重要です。このプロセスを効果的に管理することで、営業チーム全体のパフォーマンスを最大化し、成果を向上させることができます。
営業プロセスは、単なるフローではなく、継続的な改善が必要なものです。市場環境の変化や顧客ニーズの多様化に伴い、営業活動の内容や手法も変化していきます。
そのため、営業プロセスの各段階を定期的に見直し、最適化していくことが、競争力を維持する上で欠かせません。
営業プロセスの主な目的
営業プロセスの主な目的は、営業活動を標準化し、担当者ごとのアプローチの違いによるバラツキを抑えることにあります。この結果、企業全体で一貫性のある営業戦略を実行し、効果的に顧客と関わることが可能となります。
さらに、プロセスを明確にすることで、各営業担当者がどの段階でどのようなアクションを取るべきかがわかりやすくなり、業務の効率化を図ることができます。
特に、複数の部門が関与するような複雑な営業活動ではプロセスが整理されていないと、情報の共有不足や担当者間の連携不足が発生しやすくなります。
その結果、商談が停滞したり顧客への対応が遅れたりするリスクが高まります。
営業プロセスの可視化
営業プロセスを可視化することは、企業にとって大きなメリットがあります。
プロセスを図やチャートで表すことで、どの段階でボトルネックが発生しているのか、どの活動が成功に結びついているのかを直感的に理解することができるようになります。
この結果、営業チームが抱える課題を素早く把握し、具体的な対策を講じることが可能になります。
たとえば、リードの獲得数は多いものの商談に進む割合が低い場合、その原因がアプローチ方法にあるのか、顧客ニーズの理解不足にあるのかを特定しやすくなります。
このように、営業プロセスの可視化は営業活動全体の改善点を明確にし、成約率の向上に繋がる重要なステップです。
営業プロセスの柔軟性
営業プロセスは、企業ごとに異なるニーズや営業スタイルに合わせて柔軟に設計されるべきです。
中小企業と大企業では、取引先の規模や意思決定プロセスが異なるため、それぞれに適した営業プロセスが求められます。特に中小企業の場合、少人数で迅速に意思決定を行うことが求められるため、営業プロセスの迅速化や簡略化が重要です。
加えて、顧客ごとに異なる購買フェーズやニーズを考慮したプロセスを設計することが競争優位を築くために必要です。標準化されたプロセスを持ちながらも、状況に応じて柔軟に対応できる体制を整えることが営業チームの成功につながります。
営業プロセスの基本的の流れ
営業プロセスは、顧客との接触から成約までを体系的に進めるための一連のステップです。
各ステップで適切なアプローチを取ることが、成約につながる重要な要素となります。
以下で、営業プロセスの基本的な流れを詳しく説明します。
1.見込み客を獲得する
営業活動の最初のステップは、見込み客(リード)の獲得です。
見込み客とは、将来的に顧客になる可能性がある個人や企業のことを指します。この段階では、マーケティング活動やネットワーキング、展示会やセミナーなどを活用して、新しいリードを見つけ出すことが求められます。
また、デジタルマーケティングの普及により、WebサイトやSNS、オンライン広告を活用してリードを効率的に集めることが可能となっています。こうしたオンラインチャネルを適切に活用することで、質の高い見込客を効率よく獲得でき、営業活動のスタート地点を強化することができます。
2.見込客にアプローチする
見込客を獲得した後は、そのリードに対してアプローチを行います。
この段階では、顧客に対して商品やサービスに関する情報を提供し、興味を持ってもらうことが目的です。
アプローチの方法は、電話、メール、オンラインミーティングなど、さまざまな手段があり、顧客のニーズや状況に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。
特に、営業担当者がリードのニーズを的確に把握し、そのニーズに合ったアプローチを取ることが成約に向けた鍵となります。
また、初回の接触時に信頼を築くことが、商談の成功率を高めるために重要なステップです。
3.商談
アプローチが成功した後は、具体的な商談の段階に進みます。
ここでは、顧客が抱える課題やニーズを掘り下げ、それに対する解決策として商品やサービスを提案します。
この段階で、営業担当者は顧客のビジネスモデルや課題を理解し、最も適切なソリューションを提供することが求められます。
商談は顧客との信頼関係を築く重要な機会でもあります。顧客の期待に応えるために、詳細な提案やデモンストレーションを行い、顧客にとってのメリットを明確に示すことが必要です。
また、競合製品との差別化を図るために、自社製品の強みをしっかり伝えることが求められます。
4.提案・交渉
商談の後は、具体的な提案や価格交渉の段階に入ります。
この段階では、営業担当者が顧客に対して最適な条件を提示し、交渉を進めます。
価格や契約条件に関しての合意を得るために、営業担当者は顧客の予算や意思決定プロセスを把握し、適切な提案を行う必要があります。
交渉は顧客との関係をさらに深めるチャンスでもあります。
ここでは、単に価格の引き下げだけではなく、顧客のニーズに応じたカスタマイズ提案やアフターサービスの提供など、付加価値を提供することで、顧客に対して強い魅力を持つ提案を行うことが可能です。
5.クロージング
営業プロセスの最終段階はクロージングです。
クロージングは、顧客が最終的に購入を決定する段階で、契約書の締結や支払い条件の確定などが行われます。
この段階では、顧客に対して明確かつ簡潔に契約内容を提示し、迅速に手続きを進めることが重要です。
クロージング後も、顧客との長期的な関係を築くためのフォローアップを怠らないことが重要です。
特に、成約後のサポートやアフターサービスを充実させることで、顧客満足度を高め、リピートビジネスや追加契約に繋がる可能性を高めることができます。
営業のプロセスで活用できるフレームワーク
営業活動を効率化し、成功率を高めるためには、適切なフレームワークを活用することが非常に重要です。
営業フレームワークは、営業プロセスを体系化し、各段階でのアプローチを最適化するための指針となります。
ここでは、代表的な6つのフレームワークを紹介し、それぞれの特徴と活用方法について詳しく説明します。
BANT条件
BANT条件は、Budget(予算)、Authority(決裁権者)、Needs(ニーズ)、Timeline(導入時期)の頭文字を取ったもので、商談初期段階において見込み客が適切なターゲットであるかを判断するためのフレームワークです。
このフレームワークを活用することで、リードの優先順位を決定し、限られたリソースを効率的に配分することができます。
Budget(予算):見込み客が自社製品やサービスに対して支払う意思があるかを確認します。
Authority(決裁権者):意思決定に関与する人物が誰であるかを把握し、その人物に対して適切な提案を行うことが重要です。
Needs(ニーズ):顧客の具体的なニーズを理解し、それに対するソリューションを提供する必要があります。
Timeline(導入時期):顧客がどの時期に購入を考えているかを確認し、それに合わせた営業活動を行います。
BANT条件は、商談の可能性を初期段階で判断し、無駄なアプローチを避けるために非常に有効です。
BANTについて詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
【関連記事】
BANT条件とは? ~活用するメリットからヒアリングの際のコツまで解説~
DMUマップ
DMU(Decision Making Unit)マップは、顧客企業内での意思決定プロセスに関与する複数の人物を特定するためのフレームワークです。営業プロセスにおいて、顧客の意思決定に影響を与えるすべての関係者を把握することが重要です。DMUマップを作成することで、各関係者の役割や影響力を理解し、それに応じたアプローチを行うことができます。
DMUマップを活用することで、単一の担当者に頼るのではなく、組織全体での意思決定プロセスを効率的に進めることが可能になります。特に大規模な取引やB2B営業において、このフレームワークは重要な役割を果たします。
FABE分析
FABE分析は、Feature(特徴)、Advantage(利点)、Benefit(利益)、Evidence(証拠)の4つの要素から成り立つフレームワークです。このフレームワークは、製品やサービスのプレゼンテーションにおいて、顧客に対してその価値を効果的に伝えるために使用されます。
Feature(特徴):製品やサービスの具体的な機能や仕様を説明します。
Advantage(利点):競合製品と比較して、どのような点で優れているかを示します。
Benefit(利益):顧客がその製品を使用することで得られる具体的な利益を説明します。
Evidence(証拠):製品やサービスが確かであることを証明するためのデータや事例を提示します。
FABE分析は、顧客に対して製品の価値を簡潔かつ明確に伝え、商談の成功率を高めるための有効な手法です。
SPIN
SPINは、Situation(状況)、Problem(問題)、Implication(影響)、Need-Payoff(必要性の解決)の4つの要素から成り立つ営業フレームワークです。このフレームワークは、営業担当者が顧客の課題やニーズを深掘りし、それに対するソリューションを提供するために使用されます。
Situation(状況):顧客の現状や置かれている状況について質問し、理解を深めます。
Problem(問題):顧客が抱えている具体的な問題点や課題を引き出します。
Implication(影響):その問題が顧客にどのような影響を与えているのかを掘り下げます。
Need-Payoff(必要性の解決):顧客が抱える問題を解決するために、どのような価値を提供できるかを示します。
SPINは、特に複雑な商談において、顧客が自社の製品やサービスを必要としている理由を引き出すのに効果的なフレームワークです。
チャレンジャーセールスモデル
チャレンジャーセールスモデルは、従来の営業手法とは異なり、顧客に新しい視点や価値を提供することに重きを置いた営業スタイルです。このモデルでは、顧客の現状を変えるための提案を行い、問題解決に挑戦する姿勢が重視されます。
チャレンジャーセールスは、顧客のビジネスや業界に対する深い理解を持ち、それに基づいて革新的な提案を行います。このアプローチは、特に競争が激しい市場において、他社との差別化を図るために効果的です。
MEDDIC
MEDDICは、B2B営業において特に効果的なフレームワークで、Metrics(指標)、Economic Buyer(経済的意思決定者)、Decision Criteria(意思決定基準)、Decision Process(意思決定プロセス)、Identify Pain(課題の特定)、Champion(社内推進者)の頭文字を取ったものです。このフレームワークは、商談の進捗を管理し、最終的な成約に向けた道筋を明確にするために使用されます。
・Metrics(指標):顧客の成功を測るための具体的な指標を把握します。
・Economic Buyer(経済的意思決定者):予算を管理する意思決定者を特定し、その人物に対してアプローチを行います。
・Decision Criteria(意思決定基準):顧客がどのような基準で製品やサービスを選ぶかを理解します。
・Decision Process(意思決定プロセス):顧客がどのようなプロセスで意思決定を行うかを把握します。
・Identify Pain(課題の特定):顧客が抱える課題や問題を明確にします。
・Champion(社内推進者):社内で自社製品やサービスの導入を推進する人物を見つけ、そのサポートを得ることが重要です。
MEDDICを活用することで、商談の進行状況を正確に把握し、成約の確度を高めることができます。
セールスイネーブルメント
セールスイネーブルメントは営業組織の運営における比較的新しい考え方・取り組みです。
営業組織が継続的に成果を上げていくために、人材の育成や改善に向けた取り組みを行います。営業担当者がより効果的に顧客にアプローチし、売上目標を達成できるように、様々な施策を展開します。
具体的な施策としては、製品知識や顧客対応スキルなどのトレーニング、営業資料などの必要な情報を提供するためのコンテンツ作成能力の育成、CRMやSFAなど営業活動の効率化を支援するツールの導入、営業データの分析など様々な取り組みを行います。
多岐にわたる施策を組み合わせることで、営業担当者の能力を最大限に引き出し、売上目標達成に貢献します。
営業プロセスにフレームワークを使用するメリット
フレームワークを営業プロセスに導入することで、次のようなメリットが得られます。
営業戦略立案が効率化できる
フレームワークを活用することで、営業戦略を体系的に立案しやすくなります。
特に、BANTやMEDDICのようなフレームワークは、見込み客を評価し、優先順位をつけるのに役立ちます。
この結果、営業活動の無駄を削減し、効率的なリソース配分が可能になります。
営業上の課題把握が容易になる
フレームワークを導入することで、営業プロセスにおけるボトルネックや課題が明確になります。
この結果、営業チームは早期に改善点を見つけ、迅速な対応を行うことができます。
営業活動の標準化につながる
営業フレームワークは、営業活動の標準化に貢献します。
全員が同じ基準で活動することで、顧客対応に一貫性が生まれ、組織全体の営業パフォーマンスが向上します。
提案の説得力が増す
フレームワークを活用することで、顧客に対する提案のロジックが明確になり、説得力が高まります。
特に、FABE分析やSPINを使用することで、顧客に具体的な価値を示しやすくなります。
まとめ
営業プロセスを効率化し、成功率を高めるためには、フレームワークを活用することが不可欠です。
BANTやMEDDICなどのフレームワークは、商談の進行をスムーズにし、成約率を向上させるための強力なツールです。企業はこれらのフレームワークを導入し、営業活動を標準化・最適化することで、成果を最大化することができるでしょう。
NTTデータ イントラマートでは、営業プロセスのデータ管理・分析に役立つSFAツール「DPS for Sales」をご提供しています。ぜひ一度ご検討ください。