テレワークで働き方が変わるメリットとデメリットを解説
中国湖北省武漢で2019年12月に新型コロナウイルスが報告されたのを皮切りに、感染者が世界に広がり、日本では、緊急事態宣言発令に伴い政府が企業に「オフィス出勤者7割減」を求めたことなどをきっかけに、多くの企業がテレワークを導入しました。
とはいえ、すべての企業でテレワークを実施しているわけではなく、導入したくても、方法がわからなかったり、セキュリティや勤怠管理などに不安を持ったりしていて踏み切れないところもあるのではないでしょうか。
本コラムでは、そんな企業の判断材料となるよう、テレワークのメリットとデメリットの両面をお伝えいたします。
テレワークとは?
そもそも、テレワークとは、「tele(離れた所)」と「work(働く)」を合わせた造語で、ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。
本来は、在宅だけではなく、サテライトオフィスやコワーキングスペース、カフェなどにおける勤務までもを含めた言葉ですが、新型コロナウイルス禍の文脈では「在宅勤務」の意味合いに狭められて使われています。
従来から、在宅ワーク、SOHO、ノマドワーカーといった言葉の変遷を経ながら、テレワークに近い働き方は存在していました。それが、近年のICTの進歩、地震や大雨による大きな災害の頻発、2020年に東京オリンピック・パラリンピック開催が予定されたことなどの影響により、急速に普及が進んでいます。
政府も2016年に「2020年までに“テレワーク導入企業を2012年度比で3倍”“週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上」とする政府目標を掲げて普及を推進しています。
テレワークのメリット
テレワークには、さまざまなメリットがあります。
ここでは、企業側、社員側の両面からテレワークのメリットをご紹介します。
通勤時間の削減
まずは、自宅で勤務するようになるため、通勤移動がなくなり、通勤のためにかかっていた時間を削減できます。削減できた時間は、業務のほか、自己研鑽や余暇に使うことができるようになり、生産性向上や従業員満足度につながります。もちろん、通勤交通費もカットできるようになりますし、従業員にとっては通勤ラッシュのストレスからも解放されるため、仕事の能率が上がるようになるでしょう。
また、通勤のために交通の便を優先して居住地を選んでいた従業員にとっては、会社との距離を気にせず、好きなエリアに引っ越せることもメリットになります。
ワークライフバランス向上
オフィスで業務をしていた時は仕事とプライベートに時間的・空間的な隔たりがあったために、仕事が忙しいとプライベートがおろそかになりがちですが、テレワークの導入により、プライベートの時間をより充実させられるようになります。
平日でも趣味などリフレッシュのための時間を確保しやすくなるほか、クリニックやスポーツジムなどへ通って健康・体力づくりに励んだり、スキルアップのためのセミナーに通ったり、資格取得のための勉強に当てるなど、空いた時間を有意義に使えるようになります。
特に、子育てや介護をしながら働く世代にとっては、家庭と仕事を両立しやすくなるでしょう。
育児、介護などとの両立ができる
職場と自宅が一緒になることで、移動にかかっていた時間や体力を節約できるようになり、育児、介護との両立がしやすくなります。
ただ、ここで注意しなければならないのは、自宅で働くことになるからといって、安易に「家で育児や介護をしながら働ける」とは捉えないことです。業務の片手間に育児・介護をすることも、逆に育児・介護の片手間に業務を行うことも不可能ですので、共倒れになりかねません。
保育園やベビーシッター、ホームヘルパーやデイサービスといった外部サービスを確保したうえでの両立を目指すべきでしょう。
生産性向上
リモートワークにより従業員がメリットを感じれば、業務に対するモチベーションアップや集中力アップにつながります。また、業務以外の時間を有意義に活用できることでストレスが減少したり、体調が良くなったり、スキルアップしたりすることから、生産性の向上が期待できます。
企画やソリューションなどの非定形的で創造的な業務を中心に、定型業務においても業務効率化の施策発案が期待できるなど、業務全体の最適化に効果を発揮するでしょう。
企業のコスト削減
オフィスの維持にかかっていた賃料・光熱費や、従業員に割り当てていたデスク・チェアといった備品、コピー機やコーヒーマシンなどのリース代などを削減できます。また、通勤交通費も削減できます。
IT系ベンチャー企業を中心とするテレワークの先進企業では、こうして浮いたコストを財源とし、自宅における業務がスムーズになるよう通信費補助や環境改善などの目的で「テレワーク手当」を支給するところも出てきています。
テレワークのデメリット
一方、テレワークにもデメリットがまったくないわけではありません。代表的なデメリットをご紹介します。
コミュニケーションの減少
まず、従業員一人ひとりがそれぞれ自宅に散らばって業務を行うスタイルに変化することで、意識的にコミュニケーションを取るようにしなければ、コミュニケーション不足に陥ってしまう点です。
ささいな疑問、ちょっとした雑談ができなくなり、アドバイスや励ましを得られなくなることは、人によってはメンタル面で大きなマイナス要因となります。
ツールなどのインフラ整備や仕組みを整えて、気軽なコミュニケーションを取れる環境を用意し、回避する必要があるでしょう。
集中力の低下
周囲を同じように業務を行う同僚に囲まれているオフィスとは異なり、自宅で一人、または業務についていない家族と同じ空間のなかで業務を行うことになるため、集中力を保ちにくいという点もデメリットです。
また、オフィスにいるときのような周囲からの視線がなくなったり、上司や同僚、部下、顧客などと会話をする機会も極端に減るため刺激を受けにくく、メリハリがなくなりがちです。職種によっては、ずっと変化のない同じような時間が続くため、集中力が切れた後、どのように業務に集中させるかが課題となってきます。
自分でうまくコントロールできる人ばかりではないため、集中力を保つための何かしらの工夫が必要です。大人でも集中力の限界は15分程度だといわれています。15分区切りでタスクを組み、合間には席を立って伸びをするなど、ちょっとした休憩を挟みながら業務を進めることで能率が上がると考えられます。
集中力についても個々の従業員任せにするのではなく、テレワーク時の推奨勤務スタイルを示すなど、会社として施策を取るのがベターです。
勤務管理が難しい
オフィスに出社していれば、タイムカードやIC付きのIDカードなどによる打刻で管理できていた勤怠も、テレワーク時は同じ方法では行えないため、代わる勤怠システムの導入などが必要になります。
また、オフィスにいるときのように常に上司がそばにいるわけではないため、業務の進捗管理も難しくなります。ただ、目の前で働いているという安心感はあっても、進捗状況を掌握できていたわけではないケースがほとんどでしょう。こちらも業務の進捗管理を行うためのシステムやツールの導入を行うことで、テレワーク時だけでなく出勤時も進捗状況を可視化できるようになります。
注意したいのは、テレワークになったからといって管理を厳格にしようとすると、従業員の反発やモチベーション低下が懸念される点。テレワーク時の管理は、時間よりも成果物を重視するといった対応も検討すると良いでしょう。
まとめ
今回の新型コロナウイルス禍が収束したとしても、今後、新たな波が発生することが懸念されています。また、人類の歴史上では数十年周期でパンデミックが発生していると考えられています。
そうでなくても、地震や台風などの災害が多く、都心部の恒常的な通勤ラッシュが社会問題化している日本では、テレワークを導入する意義は大きいでしょう。
働く側にとっても、雇う側にとってもメリットの多いリモートワークですが、デメリットが存在する点も見逃せません。デメリットをどう解決するのか、そこをしっかり検討した上で導入を決意することをおすすめいたします。